2008年 04月 30日

足音が聞こえる

今日、病院でママンの衣類をコインランドリーで洗っていると、婦長さんが謝罪に現れた。内容は一昨日、昨日と連日、ママンを負傷させた件である。過ぎたことは仕方がないので、今後は気をつけてくださいな。

他にも会話したなかで、印象に残った会話が。

婦長さん
「今、栄養が全然とれていない状態なんですね。食べても点滴しても身につかないというか。筋肉も維持できないんです。食べる量よりも食べられるほうが多いんです」

食べる量よりも食べられるほうが多い。

針の穴を通すようなピンポイントな表現だ。

ママンの病気はガンである。ガンという病気は、宿主から栄養をかっさらって成長する。だからこそ「食べる量よりも食べられるほうが多い」のだ。

栄養を摂らなければ死ぬ。でも栄養を摂るとがん細胞が活性化する。生きるために食べるのか死ぬために食べるのか。

ママンは痩せた。痩せに痩せた。もともと細い人だったが、今では骨と皮だけだ。骨と皮だけなんて冗談のような表現だが本当にあるんだな。頭蓋骨の形状に輪郭がくぼみ、血管が浮き出ている。

今日、そんなママンの横顔をじっくり眺めた。

ママンはきれい好きである。去年、荷物が増えるからやめろよといっているのに、化粧品やら何やらを病院に持参し、身奇麗にしていた。

そんなママンだが、今では髪も顔も手入れをしていない。髪はバサバサで皮膚はカサカサに荒れ、眉毛も伸びてうっすらとヒゲも生えている。

「手入れはしないの?」ときいたら、疲れた顔で首を振った。

「しんどくてできない」

ママンは最近しんどいしんどいとよくいう。あれだけ気を使っていたのに、もう自分の体の手入れもできないくらいに弱ったのか。ああ、ゆっくりと何かが終わりに近づいている。それが現実なのか。

死。そんなものに姿形はないだろうけど、あるとするなら足音が聞こえるようで嫌な気分だ。願わくば、その到来が遠い日であることを。
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by netnetnet_78 | 2008-04-30 23:26 | 看病日記 | Comments(0)
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