2008年 02月 05日

もういいから早く帰り

ママンはわたしを含めて他人に迷惑を掛けるのが嫌いである。見舞いに行ってよくいわれたのは「もういいから早く帰り」。自分のせいで相手に面倒を掛けるのを嫌う人だ。

正月ママンはずっと入院していた。わたしの趣味は読書なので、別に病室に本を大量に持ち込んで横についていてもよかったのだけど、ママンは「来なくていい」といった。

なので、わたしは行かなかった。その間に一度だけ、ママンから電話が掛かってきた。わたしが何をしているか聞くだけの会話だった。やはり寂しいのだろうか。いってもいいよといったら「来なくていい」といわれた。

結局いかなかった。それが今では後悔のひとつだ。わたしは無理にでもいくべきだった。なぜなら今年こそがママンと過ごせた最期の正月だから。ママンの気遣いに甘えていた自分の甘さに苦い想いをかみしめる。

そのママン。連日に渡る薬の投与がきいてきたのか、体調がいくぶんかマシになってきた。主治医によると検査の結果、炎症が落ち着いてきたとのこと。大きく口を開けて苦しそうにしていた呼吸も今ではとても静かになっている。

今までは薄目しか開けられなかった目も、呼び掛ければかなり大きく開く。まだしゃべるだけの体力はないようだが、こちらの声ははっきりと通っているようで、肯定や否定くらいなら返せるようになっている。

「このまま回復するんでしょうか」主治医に聞いた。「うーん。病気を乗り越えるのは最終的に自分の体力だからね。本人にそれがあるかどうかだね」まだまだ安心はできない。そういうことか。

もってあと数日といわれた状態からよくここまで持ち直したものだ。主治医曰く「子供さんが毎日きているから本人にいい刺激を与えているんですよ」。精神論の類かもしれない。それでもわたしがいることに意味があるとするならば、わたしは毎日通おう。

家族の顔を見ることで病状が回復するのなら、わたしは自分の不義理をなじる。ママンの帰っていい。来なくていい。それを踏み越えるべきだった。もっとママンに語り掛けるべきだった。そうすればママンの病状はまだマシだったかもしれない。

意識をかなり取り戻したママン。それでも落ち込んだ体力はすぐに戻らない。彼女はありったけの体力をかき集めて、わたしにいった。わたしへの、目覚めて最初の言葉を。

「もういいから早く帰り」

それがわたしへの第一声。ああ。ママンあなたは変わりないね。それだけ弱っても、わたしのことを想うなんて。それはとても、あなたらしい。涙が出るほどに。
[PR]

by netnetnet_78 | 2008-02-05 22:03 | 看病日記 | Comments(8)
Commented at 2008-02-05 22:55 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2008-02-05 23:50 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2008-02-06 00:18 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2008-02-06 07:49 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2008-02-06 12:14 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by リスキー at 2008-02-06 13:19 x
言葉を交わせたんですね・・・
本当に良かったです^^
Commented by オニミキ at 2008-02-06 21:24 x
> All of You
かなり回復したのでホッとしています。

子供に迷惑を掛けたくないという気持ちは、
ありがたいんですが、こういうときは少し
困りますよね。。。
Commented at 2008-02-06 23:00 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード


<< 死と向き合う      痛みは最悪の暴君 >>