2009年 10月 07日

これぞ真の「銀河」英雄伝説

宇宙創成という本を読んだ。

宇宙創成〈上〉 (新潮文庫)
サイモン シン
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宇宙創成〈下〉 (新潮文庫)
サイモン シン
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これは。。。ノンフィクションになるのかな。

人類の叡智が、いかに「宇宙」というものを解釈しようとしたか。
その挑戦の軌跡を紀元前から現代までに描ききった超大作である。

間違いなく、傑作である。

もともとは地球は回らず、宇宙が回るという天動説から世界は始まった。それが地球上の人間の視点から見た世界のあり方だった。

それをいかにして、地球は回り、特別ではないひとつの惑星にすぎず、宇宙は永遠ではなく、極小の点からはじまったビッグバンへとつないでいくか。

これは二〇〇〇年を超える、科学者たちの戦いを描いた物語である。

ひとりの斬新な着想がそのまま時代に受け入れられるとは限らない。その誰かが力尽きたとしても、一〇年後二〇年後の新たなる科学者がバトンを引き継いで検証し、その事実を確かに世の中へと認めさせる。

科学者たちの志は時代に引き継がれていくのだ。これは大河ドラマである。
本作は彼らの研究に打ち込む姿を生き生きと描写している。

偏見の壁が、政治の邪魔が、戦争の妨害があろうとも、彼らはその真摯なまでの情熱をもって、空の世界に散らばる神のバズルに戦いを挑むのだ。

単なる伝記物なら、ここまで評価はしないのだけど、この本の優秀なところは、興味深いエピソードを紹介して科学者たちを強烈に印象づけているところ。また語り部である作家自身の文章に皮肉がきいていて、単純に読み物として面白い。

銀河英雄伝説を読んだ人なら、あの「後世の歴史家」視点の特殊な文体といえばなんとなくピンとくるだろう。あれに似ている。

興味深いエピソードはこんな感じ。

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ある科学者は太陽内の原子割合を調べる研究をしていた。銀行に金を借りに行くと銀行員は彼にこういった。

「太陽に金があるのがわかって意味があるんですか? 採取できないでしょ」

後年、その科学者は太陽の研究を通じて表彰され、金メダルをもらった。彼はその銀行員を訪ねてこういった。

「これが太陽を調べて手に入れた金です」
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ほかにもこんなエピソードがある。

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写真解析チームを男ばかりで作った科学者がいた。その科学者はあまりにも作業効率が悪いのにイライラして、こういってしまった。

「これならうちのメイドのほうがまだマシな仕事をする!」

その言い分を証明するため、チームを解散し、女性ばかりのチームを作り、本当に自分の家のメイド主任をリーダーにすえた。

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こういったショートエピソードを添えることによって、科学者たちが実に愛すべき存在のように思われ、生き生きとしだすのだ。

ほかにも興味深いエピソードがつらつらと。
・地動説は紀元前からすでに提唱されていた
・ニュートンは性格が悪い。巨人の肩に~発言は実は同僚への皮肉

などなど。読んでいて、へー、となること請け合い。

複雑な数式や理論に傾倒せず、科学者たちを描こうとした姿勢はすばらしい。たぶん高校レベルの物理をおおざっぱに覚えていれば、だいたいは理解できるだろう。

ビッグバンを扱う下巻は陽電子やら中性子やら出てくるので、物理アレルギーのある人には厳しいかも。相対性理論までを扱う上巻は、たぶん大丈夫。

オススメなので、科学に興味がある人はぜひ読んでください。
ホントにいい本です。





余談だけどアインシュタインってホントすごいね。ビッグバンに至る道筋は、彼の相対性理論ですべて予言されたいたんだから。相対性理論が間違っている可能性は? という質問に対する彼の答えがふるっている。

「神を気の毒に思うよ。だって、この理論は完璧なんだから」

神すら鼻で笑う傲岸不遜さが、科学者には似つかわしい。
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by netnetnet_78 | 2009-10-07 22:32 | 読書感想


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